時間(とき)の長さは時により人によりけり
第123回 大島 宗史(2016.07.20)
2014年12月にイタリアから帰国し怒涛の一年半が経過しました。帰国してから半年後に樟葉に工房をオープンさせ、翌年にあたる今春には結婚し、さらに来年には子供が生まれる予定。気が付けば工房はあっという間に一周年を迎えていました…。今思うと、イタリアに約5年間生活していた頃が遠い昔の思い出のようで不思議な感覚です。
そんな1年半の短い期間ですが、お店をしていると色々な楽器に出会うことがあります。
あるお客様が、押入れの奥に眠っていたバイオリンをふと思い出し、そのバイオリンを我が工房へお持ち下さいました。
そのバイオリンは”埃だらけ” ”弦は切れ” ”いたるところの膠は剥がれ落ち” ”弓の毛は切れ弓を張ることすらできない…”
そのような状態ですが、その楽器へのお客様の思いは図り切れません。
可能なかぎり復元を試み、音色を奏でられるようになったバイオリンをお客様へお返しさせて頂きます。そんな時、ふと思うことがあります。
”酷い状態のバイオリンでも工房に持っていくとまるで魔法のように生き返らせてくれる”
”まるで眠っていた時間を戻したかのように”
”家に持ち帰ったら、家族に自慢しながらバイオリンを弾いてみよう”
”昔のようには弾けないけれど、昔を思い出し、押入れに終い込んでいた間の時間の分だけ音色の深みが増しているはず”
”きっと昔のバイオリンの音色を楽しんでいた気持ちに戻る気がする”
お客様がそんな思いに浸っていて欲しいな。そんな工房でありたいなー。
と、妄想してしまうのです。
次回は8月5日更新予定です。