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ニスの色

第52回 河村 盛介(2013.07.20)

赤色?茶色?赤色?茶色?

楽器を作るときはいつも、どんな仕上げにしようかとあれこれ考えながら作業しています。音はもちろんですが、見た目を大きく左右するニスについては毎回悩みます。
バイオリンの色はと聞かれて思い浮かぶのは赤や茶ですが、例えば赤といっても、オレンジに近い赤もあれば、明るく鮮やかな赤、暗めの赤、紫がかった赤、茶色っぽい赤など様々です。このニスの色によっても楽器のイメージが変わるので、いろんな楽器を実際に見てみたり、写真集やポスターを眺めたりしながら、どんな色に仕上げようかと常に悩んでいます。

2つ共ブラウン・マダーという色で売られていますが、メーカーが違います。2つ共ブラウン・マダーという色で売られていますが、メーカーが違います。

仕上がりのイメージが決まったら、それに合わせた色ニスを作るのですが、皆さんはどうやってニスに色を付けるかご存知ですか。
色を付ける前のニスでも、溶けている樹脂によって多少の色がついていますが、通常はさらに顔料や染料を混ぜて好みの色にニスを仕上げていきます。ご存知の方も多いと思いますが、バイオリンに使われるニスには、大きく分けてアルコールニスとオイルニスの2種類があります。それぞれに使用できる顔料や染料は多少異なりますが、色の調合の仕方はほぼ同じです。顔料や染料には天然のもの人工のものなど沢山の種類があり、さらに産地やメーカーなどによって同じ色名でも微妙に発色が異なります。したがって、どの顔料と染料をどのような割合で混ぜ合わせるかという組み合わせは無限にあります。

私が持っている顔料と染料の一部です。あまり使わないものもありますが、どんどん増えていきます。私が持っている顔料と染料の一部です。あまり使わないものもありますが、どんどん増えていきます。

新しく色ニスを作る際には、色を調合、調整するたびに端材などに塗って色を確認します。しかし、小さい端材に塗った場合と楽器に塗った場合とでは、色の感じが微妙に異なることが多く、実際に楽器にニスを塗りながら色を微調整することもよくあります。さらにニスを塗った後、その表面をクリアに仕上げるかマットに仕上げるかによっても色のトーンが変わりますし、太陽光の下で見る場合と蛍光灯の下で見る場合、また写真に撮った場合で、それぞれ色が違って見えます。このため、色の判断は難しく、これでいいのかどうか常に悩みます。このように、ちょっとした条件の違いによっていろんな変化を見せ、一筋縄でいかないところが、ニスの難しいところでもあり、また楽しいところでもあります。

次回は8月5日更新予定です。