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散歩

第50回 中西 桂仁(2013.06.20)

工房兼自宅で仕事をしているせいもあって、なんとなく引き篭もりになりがちで、段々と散らかってくる机の上を見ていると、まるで自分の頭の中を見ているようで、思考停止に陥る時がままある。ただでさえ出来の悪い頭なのに、こんな状態でまともに仕事ができるわけがない。そんな時は散歩に出かける事にしている。

旧栃木市庁舎。古き良き時代の建築物。建物の周りを囲うように県庁掘があって、やたら餌をせがむ鯉と鴨が沢山いる。もちろん、どこにでもいる鳩もいる。旧栃木市庁舎。古き良き時代の建築物。建物の周りを囲うように県庁掘があって、やたら餌をせがむ鯉と鴨が沢山いる。もちろん、どこにでもいる鳩もいる。

私の住んでいる栃木市は、栃木県でも南のほうにあり、関東平野の最北端あたりのため、遠くのほうに日光連山が見えるものの、自宅の周りは全くの平地で、自然を満喫という風光明媚な場所ではない。そんなわけで、散歩とは言っても近所の住宅街を抜けて、少し離れた市役所のあたりまで行く程度の倹しいものだ。

栃木の市役所は、周りを県庁堀と呼ばれるお堀で囲まれているが、これはその昔、県庁所在地が今の宇都宮ではなくこの栃木市にあった頃の名残だそうな。市街地には土蔵造りの蔵が多く残り、蔵の街として観光地になってもいる。週末になると、大勢・・・とは決して言えないが、ちらほらと観光の方を見かける事は多い。

街の中心を流れるうづま川。5月にはこんな風に、たくさんの鯉のぼりが。冬の時期には青みがかった白色LEDのイルミネーションで飾られ、より一層の寒さを演出。色とりどりのクリスマスカラーみたいなド派手なやつよりよっぽどセンスは良いと思う。街の中心を流れるうづま川。5月にはこんな風に、たくさんの鯉のぼりが。冬の時期には青みがかった白色LEDのイルミネーションで飾られ、より一層の寒さを演出。色とりどりのクリスマスカラーみたいなド派手なやつよりよっぽどセンスは良いと思う。

生まれた時から18年ほどはずっとこの街に住み続けていたわけなので、今更風景を眺めるわけではなく、ただただ歩く。机に向かって考えるのと、足を動かしながら、そして外の空気や匂いを感じながら脳を動かすのはだいぶ違って、雑然としていた頭の中身が、どういうわけかだんだんと整理整頓されていく。その上、ふっと良いアイデアが浮かんだり、わからなかった事の辻褄が合ったりする事もある。ひと通り頭の片付けが終わったと感じられたら家に戻り、仕事を再開する・・・前に机の上を片付ける。
散歩は私にとって、なくてはならない儀式のようなものなのかもしれない。

次回は7月5日更新予定です。