発表会
第38回 前田 壮学(2012.08.20)
8月初旬、私の地元、箕面のとある場所で小さなヴァイオリン発表会が催されました。4歳から高校生までの10人ほどの子供たちが出演していました。その内の中学1年生の女の子が、私の製作したヴァイオリンで、演奏してくれたのです。彼女は3カ月前まで分数ヴァイオリンを使っていましたので、フルサイズヴァイオリンでお客様の前で演奏するのは初めてです。フルサイズヴァイオリンデビュー曲は、クライスラーの「ブニャーニ様式による前奏曲とアレグロ」という難曲です。
彼女の出番が近づくにつれ、ご本人はもちろん演奏前の張りつめた緊張があったと思いますが、私の方も、さて、どんな音色となるのか、この空間でどう響くか、お客様のヴァイオリンへの反応は如何なるものとなるか…、緊張で胸が高鳴りました。言うなれば、我が子がオーディション受けるような気持ちになるのですから。公の場で私の製作した楽器を弾いていただき、聴衆のひとりとして聴く機会はこれまでにも何度かありましたが、毎回、座っているだけで1キロ体重が落ちそうなほどの大変な緊張です。本当に痩せていればよいのですが。
さて、曲が奏でられ始めると、素晴らしい曲想と、今日の為に練習に励んできた彼女の演奏にも思いが及ぶのですが。やはり、楽器のことばかり考えてしまいます。
とにもかくにも、自分がこだわって作った楽器で、集中して弾いてくれる、またそれを聴いてくれる方々がおられる・・・。製作者冥利につきます。
これからどのような音を出させるのか、出していくのか、ヴァイオリンと対話しながら、日々、私のヴァイオリンを可愛がってくれることでしょう。彼女の成長と共に、ヴァイオリンの音がどう変化していくのか、とても楽しみです。
次回は9月5日更新予定です。