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Liuteria TAKASHI10周年

第315回 大島 崇史(2025.4.20)

お陰様で今年の6月でLiuteria TAKASHIは10周年を迎えさせて頂きます。

自分でも実感の沸かない年数でもありますが、区切りの年かとも思いますので、このコラムを通して、私の弦楽器業界について振り返りたいと思います。
私は、バイオリン演奏を趣味とする父の助言もあり、2007年に東京・代官山音楽院のバイオリンクラフト&リペア科が新設されたタイミングでこの業界の世界に入りました。
東京の制作学校時代では、幸いにも恩師や友人に恵まれ、楽しく充実した2年間を過ごしました。
この業界に入った当初から、イタリア・クレモナで学ぶ事を念頭にしておりましたので、卒業後直ぐに渡伊し、クレモナバイオリン制作学校に入学し、4年間弦楽器の制作を学びました。イタリア生活でも恩師に恵まれ、マエストロ・ロレンツォ・マルキやジョルジョ・スコラーリ氏のもと、制作技術の習得に努めました。
卒業後も1年間、クレモナの住居先で弦楽器の製作に明け暮れていました。
なによりも、イタリアの街並み、文化に触れ、その空気感を自分自身で感じられた事が財産となりました。

2014年に帰国し、大阪市内のLiuteria BATOで経験を積ませて頂きながら、2015年に地元である枚方市楠葉にてバイオリン工房を開きました。
開店当初は、至らないところもありご迷惑をおかけしてしまったお客様もいました。
慣れない接客業でもあり、当初のお客様からは今とは別人の様(不愛想)だったとも…。
しかし、知名度もない中での営業ではありましたが、年数を重ねて行くと定期的に来ていただける方も増え、小さなバイオリンを背負ってお母さんと来てくれていた子供が、いつの間にかフルサイズになり、やがてはその子1人だけで毛替えや調整に来てくれるようにもなりました。
自分自身も結婚し、子供を2人持つ父親にもなりました。
子供のバイオリンを修理しているなんで10年前には想像できたでしょうか…。

話は変わりますが、「一万時間の法則」というのをご存じでしょうか。
特定の分野でプロレベルになるには、約一万時間の練習、努力、学習が必要であるという主張なのですが、年単位で行くと丁度10年くらいになるそうです。
私自身、弦楽器職人としては20年近くの経歴になりますが、工房を運営して10年。
はたして経営者としてもプロになれているのか⁉は、数字が教えてくれているかもしれません。

現在も有難い事に、お客様や先生方、業者や業界の方々、地域の皆様にも恵まれ、
支えて頂きながら、楠葉での風を感じながら弦楽器を製作、修理をさせて頂いています。

みなさま、これからも宜しくお願いいたします。