トリエンナーレヴァイオリン製作者コンクール参加報告
第304回 根本 和音 (2024.11.05)
こんにちは、クレモナでヴァイオリン製作活動をしております根本和音です。
今年2024年、ここクレモナで3年に1度のヴァイオリン製作者コンクール、通称「トリエンナーレコンクール」が開催されました。
自分もヴァイオリンとヴィオラで参加させていただきましたのでご報告させていただきます。
今回のトリエンナーレコンクールには全部門合わせて400挺を超える参加申し込みがあり、とても多くの楽器がここクレモナへ集まるのだと楽しみにしておりました。
そして例年通り、製作者5名と音楽家5名の審査員によるとても大きなコンクールとなりました。
基本的に参加資格があるのは主に楽器職人として活動している方であり、いわゆるプロと呼ばれる人たちのみが参加資格のあるコンクールのためかなりレベルの高いものとなっています。
楽器の提出方法も他のコンクールより入念にどの楽器がどの製作者によって製作されたかと言うのがわからないように、
まず参加申し込みの際にランダムに割り当てられる番号があり、実際に提出する際にまた違う番号を楽器に対して割り振ったのち審査員が見る際にもう一度違う番号が割り当てられるという徹底ぶりです。
そして技術点、音響点共に高得点の一部の楽器のみ最終音響審査(一般公開)へ進むことが出来ます。
こちらも楽器の前についたてを立て、審査員からも一般の方からも見えない状態にし音響審査を行います。
今回は最終音響審査へ進んだ楽器が多く、数時間かけてじっくりと審査されました。
その中で一定の点数以上を獲得した最高得点の楽器にゴールドメダルが授与されます。
結果から言いますと今年はヴァイオリン、ヴィオラに1位無し、コントラバスに至っては1位、2位無しという不思議な結果に。
唯一チェロのみ1位受賞者が出るという結果になりました。
プロの製作者コンクールということもあり、確かに上位数十挺は獲得点数が僅差になる場合が多いですが、流石に1位無しが3部門というのはいささか不思議な印象でした。
表彰式では上位受賞者の楽器を使ってコンサートが催されているのですが、
これまた楽器の音を引き出す奏法ではない印象の弾き方で演奏されており、とても物足りないものとなってしまっていました。(あくまで個人的主観です)
ですが世界各国からプロの楽器職人たちが多く集まる良い機会であり、実際に世界中に散っていった学生時代の友人たちに久しぶりに会えたり、職人の先輩たちとも沢山楽器について話す機会が持てるなかなか普段とは違ったイベントでした。
自分も審査員の方に自分の楽器についてコメントを頂き、実りのある時間でした。
今後の楽器製作へ活かして頑張っていきます。