「ガット弦と楽器」
第248回 鈴木 公志(2022.6.20)
バロックバイオリンと(モダン) バイオリンの違いは何でしょうか?
専門的な話になるとネックの長さ・太さ、バスバーの形状、 あごあての有無などありますが、極論を申し上げると「 ガット弦を張ってバロック弓で弾くか」だと思っています。
個人的な見解ですが、現代のピリオド奏者( 曲が生まれた当時の楽器様式で弾く奏者) はそれほど当時の楽器セッティングにこだわらない様になってきた 様に思います。
モダンもバロックも同じ楽器で、しかし弓と弦だけは変える、 など使いわける方も増えてきた様に思います。
確かに無理をして下手なバロックバイオリンを持つより、 しっかりとしたメインの楽器にガット弦を張り替えた方がよっぽど マシな音がするでしょう。
それもひとつの選択だと思います。
しかし製作者サイドからの見解としては、 なぜ昔に比べバスバーの大きさが変わったのか? ネックもわざわざすげ替えているのは?という問いに対して「 弦が変わってきた為、本体を弦にあうベストな状態にする為」 と答えざるを得ません。
つまりバロックバイオリンはガット弦、 それも現代の様に巻きガット( 芯はガットで表面を金属で巻いてあるもの) ではなく当時使われていた裸ガット(巻きが無いもの) を張った時に最も適した状態にしてあるバイオリンだと考えます。
もちろんガットにも様々な種類がありますし(太さはもちろん、 素材や作り方)、どの様な弓で弾くかによっても変わります。
楽器本体も、 ネックなどはどの様な左手の使い方を選択するのかによって太さな ども変わってきます。
それに現代で演奏会に使われる以上、学術的な事に固執して、 演奏効果を無視するのも現実的ではないでしょう。
ですので「絶対コレ!」 といったバロックバイオリンも存在しないのも本当の事です。
それでもバロック好き職人としては「 モダンバイオリンでは出し難い魅力を知って欲しい!」 そんな事を思って日々新作を作ったり、 古い楽器のリバロックをするのでした。
「今は色々なメーカーがガット弦を出しています。 各メーカーでの特色も豊か」
「想定する年代によっても違いますが、1〜3弦が裸ガット、 4弦は巻きガットを使うのが一般的」