ニスリタッチ
第228回 高橋 明(2021.7.20)
いよいよ夏本番が近づいているこの時期、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
クレモナも日に日に暑くなってきており、ちらほらバカンスに向かわれる方も見られます。
さて、今回はニス塗りの手法に関してご紹介させていただきます。
私が使用しているニスは標準的なアルコールニスですが、通常アルコールニスは斑(ムラ)ができやすくて綺麗に塗りにくく、また美しく塗るためには薄い層を何層も塗り重ねないといけない、やっかいなニスです。
ただムラなく均一に塗るだけでは(それだけでも難しいのに)、木目が消されてペタンと平面的に見えてしまうことが多いです。
そのため、私は表板の木目を浮き立たせる手法でニス塗りをしております。
一旦均一にニス塗りをした表面を磨いて、木目を浮き立たせた状態が下の写真です。
このままでは木目は浮き出ていますが荒々しすぎるので、これから細い筆を使って木目を一本一本リタッチしていきます。
そうすることで、木目は浮き立ったままなめらかな仕上がりとなります。
これはリタッチが終わった部分です。写真ではなかなかわかりにくいですが、木目が浮き立った均一な仕上がりとなっています。
写真は、左半分がリタッチ前、右半分がリタッチ後です。お分かりいただけるでしょうか。
このリタッチ作業、細かい上に大変時間のかかる根気のいる作業です。
ヴァイオリンの場合、この作業だけで丸3日、下手したら1週間ちかくかかってしまいます。老眼だとますます大変です!(笑)
お、もうすぐリタッチ終了です。
リタッチが終了、こんな感じに仕上がりました。
リタッチが終われば、f字孔の中のニスをすべて剥がして、きれいに塗り直します。
ニスって、手間がかかります。これもすべて美しくニスを塗るために必要な作業なのですね。