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職人とは言えそうもないマニアックなヴァイオリン製作

第179回 久我 一夫 (2019.5.20)

ヴァイオリンを作り続けて、作る度に、新しい発見と前進が有ります。
有ると思っています。今年71才になりますが、今の時点で もう他にする事は無いだろうと思うようになってきました。
やるべき事は、沢山有り過ぎて、何か忘れない様に、欠落しないように・・・が精いっぱい。
それでも、材料が違う事で、同じには鳴りません。
少しの彫る面積の大小、深さの増減で音色が変わり、悪くはならないものの、思う音色と違う場合が多々あります。
それは、弦を張って音を出しながら 板を削ったり、強化したりし、最終の音を作ります。

こんな事をしているのは私くらいでしょうか?
思うように作れる人がうらやましい。
どこを どうすると どんな音になるのか?
やっと解るよいうになった! いや気がします。

出来上がった後に、目標の音色に近くなるように板を加工することもしばしばです。
興味深いのが、ストラディヴァリもグアルネリも ほとんど同じ様に作ります。
あれほど違う形、音色なのに ある意味で 同じ様に作ります。
さじ加減で、がらっと音が変わります。
手品のようなヴァイオリン製作!
70才になって 手品師の感覚が少し分かる気がします。冗談ですが!
しかし しかし 私のヴァイオリン作りは、普通のヴァイオリン作りの工程にくらべ10倍以上時間を要します。つまり一般的な作業に加え、いろいろな加工作業が追加されそれが膨大な時間と集中力、飽きない様に、休み 休み均一な作業が必要になります。
これほど ヴァイオリン作りが大変とは思いませんでした。70才になるまで、69才までは、そうは感じませんでした。
それが 音にどう変化をもたらすか?聞いた人にどう聞こえるか?
感動していただけると 嬉しい限りです。
アマテイの音、ストラディヴァリの音 グアルネリの音 いろいろな音が有り200才くらいまで生きないと 思う存分作れない気がします。
それで、10挺分くらいを1挺に集約し時間をかけています。
沢山作って、沢山の人に弾いていただきたいのですが、残念ながら難しい。
マニアックなヴァイオリン製作。