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反日デモ

第41回 小玉 剛司(2012.10.05)

9月15日は仕事に行くかどうか迷った。反日感情がかってないほどに高まっているのを肌で感じていたからだ。わたしは今中国でバイオリンを制作、指導している。その店がちょうどデモ行進が行われる通りのど真ん中にあったのだ。もし見つかればただではすまないだろう。店のバイオリンも破壊されるかもしれない。ただその反面大丈夫だという自信があった。まず同じアジア人、顔では日本人と識別できないし中国語もできる。そしてわたしの周りはとても親切な人たちばかりなので、いざとなったらかくまってくれるだろう。そして何より私自身が中国を愛する日本人として見ておきたいと思った。悪く言えばただの野次馬精神だがとにかく出勤した。

太陽が真夏のように照り付ける中、絶好のデモ日和だなと思いつつ自転車をこぎ9時半には到着した。店の付近はすでに警官がいっぱいでちょうど第一群がやって来たところだった。100人ほどだろうか、警官に誘導され整然と歩きながら「釣魚島(尖閣諸島)は中国のものだ!」「日本製品を買うな!」と声をそろえる。ただその時は規模の小ささに安心して店に入り仕事を始めた。

取り巻く人々取り巻く人々

ところが10時頃になると外が騒がしい。窓から見てみるとすごい人数の行進がやってきた。1000人は軽く超えるだろう。垂れ幕や国旗を手に練り歩く。それを見る通行人も次第に数を増やし通りはあっという間に人で埋め尽くされた。デモ隊を取り巻く人々が写真を撮ったり「加油!(がんばれ)」と応援したりするためデモ隊もそれに答えて英雄気取りだ。ただこの時も彼らは整然と通り過ぎていったため再び仕事に戻った。

日本車発見!日本車発見!

しかし午後になって事態は一変した。高揚したデモ隊が暴徒化して戻ってきたのだ。通りでは日本車狩りが始まった。トヨタ、ホンダ、日産、三菱等が通るたびに走って追いかけ取り囲み、殴る蹴るそして最後には横転させる。店のすぐ前でもホンダのRV車が襲われた。ミラーが壊されドアを剥ぎ取られひっくり返された後は蹴り放題。それを一緒に見ていた中国人の友人は「彼らが一生かかって稼いでもあの車は買えないだろう。彼らは必ず後悔することになる。」と言っていた。彼の言葉通り後日厳格な取締りが行われていた。幸いわたしの存在には誰も気付かなかったようだ。帰り道にはたくさんの日本車が無残な姿で横たわっていた。

やっちまえー!!やっちまえー!!

これを読むとやっぱり中国は・・・と思うかもしれませんがただ知っていただきたいのは暴徒化したのはあくまで一部の人だということ。日本の報道を見ていると中国全土がそういう風潮になっているようにみえますが大多数の人は理性的です。このような状況でも彼らの文化、考え方を理解し、尊重して接すれば必ず打ち解けることができます。それに中国は広大で人口が多いため都市ごとにまた格差ごとに考え方が違いいろんな人がいます。ですから中国人は・・・と一概にくくることはできません。この点で日本人は良くも悪くもはっきりとしたものさしを持っていてそれで測れない事柄は受け入れられない傾向があるように思います。こうした違いが摩擦を生んでいるのかもしれません。

長くなりましたが、たくさんの方が心配してくださったためこの場を借りて現地の状況をお伝えできればと思いました。気遣ってくださりありがとうございました。

次回は10月20日更新予定です。